友意白雑記帳

だいたい自分用の覚え書き

構想中のプロジェクト群(2)

最終更新:2022.06.29

こちらは「ちょっと今スグには難しいけれど、将来やってみたい!」系のアイディア集。

 

主プロジェクトの完了後、あるいはトラブルが発生した場合のバックアップとして、以下の課題群にも取り組む予定である。優先順位は前後する可能性がある。

格子ベースのREDF計算の量子コンピューター用アルゴリズム

格子計算は基底関数ベースの計算に比べて拡張性に優れており、変形核や時間発展系への応用を考える際に有利である。また、REDF理論を含む、相対論的な場の理論にもとづいた数値計算は、量子色力学や強相関電子系においても重要な課題である(John Preskill, arXiv:1811.10085v1, 2018.)。本課題では量子コンピューター用の格子REDFアルゴリズムの開発を行う。従来型と量子コンピューターの長所を組み合わせることで、高速・高効率なREDF数値計算を実装する。

時間発展性および量子トンネル効果の再現と核子ドリップライン

近年REDF計算においても、あらわな時間依存性の導入と応用が試みられてきた(Z.X. Ren, P.W. Zhao, and J. Meng, Phys. Rev. C 102, 044603, 2020)。この課題では格子ベースのREDF計算を基点とし、これに時間依存性と量子トンネル効果の再現能力を実装することを目標とする。陽子・中性子ドリップラインの外側からの核子放出崩壊は、非束縛な原子核が起こすものであり、開いた量子系としての取り扱いが要求される。しかし時間依存平均場計算においては、量子トンネル効果が正しく再現されないという問題がある。解決策として、時間依存生成座標法の導入を検討している(N. Hasegawa, K. Hagino, and Y. Tanimura, Phys. Lett. B 808, 135693, 2020)。開発した計算手法を、1陽子および1中性子放出崩壊に応用し、核子ドリップラインを議論する。

参考:MCD2022会議でのDarioの発表

https://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~mcd2022/program0526.php

核子・中間子結合の第一原理からの導出

現行のREDFラグランジアンの結合パラメーターは、実際の原子核の観測量にフィットして決められている。一方で、最近の計算機の発達により、強い相互作用の第一原理である量子色力学から出発して、これらの結合を導出する試みが提唱されている。本研究では格子QCDやクォーク模型などの分野と連携し、現象論的な核子・中間子結合の起源を議論する。

電子多体系の密度汎函数理論とのつながり

REDF理論のアイディアは、より一般的なフェルミオン多体系にも拡張が可能である。最近では多電子系においても、相対論的効果が無視できない問題が注目されている(Takao Tsuneda, Journal of Computer Chemistry Japan, Vol. 13, 71-82, 2014; Tomoya Naito et al, Journal of Phys B, Vol. 53, 215002, 2020.)。REDF理論の定式化や数値計算法について、原子・分子や物性分野とノウハウを共有し、フェルミオン多体系の普遍的な法則を議論する。