友意白雑記帳

だいたい自分用の覚え書き

マスクが有効な理由が、一つだけだと誰が決めた?

研究でもしょちゅうあることなのですが、というか、今読んでいる論文でもそうなのですが、ある原因からある結果が導出、または予想されるとき、それをたった一つの理由だけ聞いて納得してしまうのは、非常に危険だ、という話です。

 

たとえ話として、「マスク着用はウイルス由来疾患の予防に有効なのか?」問題を。以前にもちょくちょく触れている話題ですが。

さて、私が「マスクはウイルスに対して無効だ!」と主張したとして、その理由が「マスクの網目よりもウイルスのサイズは格段に小さい→ウイルスはほとんど素通りで体内に侵入できてしまうから。」だとしたら、皆様納得していただけるでしょうか?尚、ウイルスの大きさ云々という知識は、正しいとします。それでも、多くの人は釈然としないと思います。

マスクを付ける→ウイルス性疾患にかかりにくくなる、という因果関係を保障する理由としては、ざっと考えられるだけでもこれだけ挙げられます。
(1)ウイルスを物理的にシャットアウトする(これは上記で否定されている)。
(2)マスクによって呼吸器内部に水蒸気が溜まり、これがウイルスを弱体化させる。
(3)マスクはウイルスは弾けないが、他の、サイズが大きい細菌やゴミは防げる。結果、本来これらの雑魚敵に対処していた体力・免疫力の無駄使いがなくなり、ウイルスの撃退に集中できるようになる。
(4)「ちゃんとマスクを付けている!」という安心感と心身相関により、着用していない場合に比べて、身体と免疫力が健康に保たれる(殆ど精神論ですが)。

本当に「マスクなんざ無意味!」と主張したいなら、これらの理由を全て潰さないといけません。逆に言えば、「マスクが有効」だという統計結果だけ見ても、上記の内、どの理由かは判別できないのです。科学論文でも、新しい因果関係を「発見」しただけで、その理由群を「解明」できていない場合、評価は一段低くなります(ゼロにはなりませんが)。

あとメタ分析的な話として、こんな可能性もあります。
(5)油断せずにマスクを付ける人は、他にも自己防衛策(真にウイルス予防に有効なもの)を講じている人が多く、結果、マスク着用者の方が、ウイルスにかかりにくくなる。


個人的には、これらの論点を全て自力で肯定or否定できていないので、マスクが云々という判断は保留中なのです。

 

しかし人間は往々にして、原因→結果の通り道が一本であって欲しいと願うものです。だってそっちの方が簡単だから。単純明快な論文や説明の方が人気を取りやすく、自分自身も安心させてくれます。この誘惑にどこまで抗って、色々な可能性について調べ尽くせるかが、知識人の真骨頂なのかもしれません。
まあ、だからと言って、単なる難癖を「検証すべき可能性だ!」とうそぶいて投げつけるのも、それはそれで問題なんですがね。

f:id:Tomoishiro:20201122040731p:plain

 

Who fixed only 1 reason for 1 event?

(This is the English version of my article on 22th/11/2020. この記事は下記の英語訳になります。)

「物事が起こる理由が、一つだけだと誰が決めた?」 - ともいしろの雑記帳 (hatenablog.com)

This is something that happens all the time in research, or even in the treatise I'm reading now. When a certain result is derived or expected from a certain cause, could you be convinced by hearing only one reason? If yes, it's very dangerous.
As an example, think the question "Is wearing a mask effective in preventing virus-related diseases?" It's a topic I've touched on often before.
Now, let's assume that I insist "masks are NOT effective against viruses!", and the reason is "The size of the virus is much smaller than the mesh of the mask → The virus can almost pass through and enter into the body." If so, would you be convinced? The knowledge of the size of the virus is correct. Still, I don't think many people are persuaded.
To certify that "Wearing a mask can be the reason of less susceptible to viral diseases", there can be several ideas.
(1) Physically shut out the virus (this is denied above).
(2) The mask causes water vapor to accumulate inside the mouth an nose, which weakens the virus.
(3) The mask cannot repel viruses, but can prevent other large bacteria and dust. As a result, the waste of physical strength and immunity that originally dealt with these small fish enemies has disappeared. You will be able to concentrate on fighting off the virus.
(4) Due to the sense of security of "wearing a mask" and the psychosomatic correlation, the body and immunity are kept healthier than when not wearing it. It's almost a mental theory.
If you really want to insist that "masks are meaningless!", you have to eliminate all these reasons. To put it the other way around, it is not possible to determine which of the above reasons is responsible for the statistical results that "masks are valid". Similarly, if a scientific paper only "discovers" a new causal relationship but does not "elucidate" the reasons, the rating will be one step lower (although it will not be zero).
Also, as a meta-analytic story, there is such a possibility.
(5) Many people who are alert and wear masks also take self-defense measures (those that are truly effective in preventing viruses). As a result, mask wearers are less susceptible to the virus.
Personally, I haven't been able to affirm or deny all of these issues on my own, so the judgment that "Mask is bla bla bla ..." is pending.
However, humans often want a single path from cause to effect. Because it's easier. Simple and clear treatises and explanations are more popular and reassure you. It may be the true value of intellectuals to be able to resist this temptation and investigate various possibilities.
But, well, that's also a problem if you just claim a too difficult order and throw it as "a possibility to be verified!".

f:id:Tomoishiro:20201122040731p:plain

クロアチア、秋、終了。

題名そのまま、クロアチアは本格的な冬に突入です。クリスマスシーズン始まってるんだから当たり前といえばそうなんですが。

個人的に、秋の終わりを決定づけるのが、紅葉(とかいってほとんど黄色ですけど、、、)が落ちること。ここZagrebでも、秋は紅葉が見られるのですが、今朝はほとんど落ちてしまっておりました。

f:id:Tomoishiro:20201121050025j:plain

クロアチア・ザグレブの紅葉その1

f:id:Tomoishiro:20201121050149j:plain

紅葉その2、奥に見えるのはおなじみ大聖堂。

以上、かろうじて撮れた写真です。今朝は気温が3度くらいしかなく、慌てて冬用コートを取り出して出勤しました。今週末はガチの冬支度になりそうです。

冬は寒さも勿論ですが、空気の乾燥も厄介です。各種ウイルス(コロナやインフルエンザ)は蒸気に弱いのですが、それ即ち、冬は奴らにとって天国ということ。しかも寒さで人間様は体力・免疫力ともにガタ落ちとくれば、ウイルスどもはヒャッハーし放題です。そんなわけで、皆様も重々お気をつけ下さい。

尚、マスクがウイルスに有効(かもしれない)根拠の一つとして、マスクによって呼吸器内部に蒸気が溜まるので、そこを通ったウイルスが弱体化するから、という説があります。ご参考まで。

日本物理学会が完全オンライン化

来年3月の日本物理学会・年次大会ですが、完全オンラインでの開催が決定したようです(今更)。

第76回年次大会(2021年) | 学会活動 | 一般社団法人 日本物理学会

 

コレ、私のような海外在籍の研究者には結構ありがたい話です。コロナ以前のような現地開催だと、日本への航空券&宿泊費だけで軽く数十万円かかります。個人で負担するのは流石にきつい、、、。

更に問題なのが、日本語での研究発表は活動実績として評価されにくいこと。なので研究費を使って参加しようとしても、「もっと別の、国際会議(英語発表)とかに参加しろよ。」と文句付けられることもしょっちゅう。

あと、関係者でないと意外と知らないのが、この日本物理学会・年次大会は、いわゆる「査読」が無い点。国内・国外問わず、権威ある場での研究発表には、事前に概要(Abstract)を提出し、それが審査され、発表に相応しいかチェックされます。しかし物理学会の年次大会では、参加人数が多過ぎることもあり、この査読はありません。参加に必要なのは日本物理学会の会員であることだけ。査読の無い研究発表も、やはり評価されにくく、研究費のスポンサーからは渋い顔をされます(欧州だと特に)。

ちなみに私が学生の頃は、無査読なのをいいことに、かなりトンデモな研究発表(〇〇波動とか●●タキオンとか)もありました。現在はルールが変わったかもしれませんが。


そんなわけで、査読無し、言語は日本語、開催地は遠い、な学会にはなかなか足を運びにくかった訳です。オンライン開催であれば、最大のネックである遠隔地問題が消滅します。


さて、色々文句をつけてしまいましたが、日本の学会に参加することにも、意味はあります。なにより、日本全国の研究者が一堂に会するので、自分の視野を広げるのにはもってこいです。あと、日本の大学等でのポストを狙っている場合、偉い先生に自分を売り込む最大のチャンスでもあります。


ただし、オンライン開催になると、一つ新たな問題が。ズバリ「発表後の食事・飲み会が無い!!」

 

冗談ではなく、学会に足を運ぶ最大の理由が、研究発表以外の時間での、研究者仲間とのコミュニケーションです。雑談から新しい論文ネタが産まれるのが研究の世界です。そもそも、15分かそこらの口頭発表だけで、研究内容を分かってもらえることなんてあり得ません。なので真のメインイベントは、発表が終わった後の議論、口喧嘩、与太話になります。それが当たり前にできていた時代は、もう二度と来ないのかもしれないですが、、、。

 

まぁ、そんなこんなで、私もこれから参加申し込みをしようと思います。

 

f:id:Tomoishiro:20201120125632p:plain

 

え、海外から日本に祝電を!?

高校時代の親友の一人がめでたく結婚されることになりました。本来なら直接会って、思い出話も交えてことほぎたいところなのですが、昨今のすったもんだもあり、残念ながら今回は見合わせる決断をしました。おのれコロナウイルス、、、。

で、せめて小粋な祝電をば打たん!となったとき、海外に居ながらでも、申し込めるサービスがいくつかあります。個人的にオススメなのが以下二つ。

 

NTT東日本 D-MAIL:

https://www.ntt-east.co.jp/dmail/

 

日本郵便 Webレタックス:

https://www.post.japanpost.jp/service/letax/

 

どちらも、結構直前でも申し込みができるのも魅力です。せっかくめでたいイベントなので、文面や贈呈品も出来る限り吟味したいときは、特にありがたいです。というか、こういうのを選んだり考えたりするのって、純粋に楽しい。旅先での土産物選びと同じですね。

こんなご時世ですが、明るいニュースを届けてくれた友人に、どうか幸多きことを。

クロアチア冬の風物詩「パネットーネ」

さて、クロアチアでも絶賛クリスマスシーズン中です。こちらのクリスマスの風物詩といえば、そうパンドーロ(Pandoro)!あるいはパネットーネ(Panettone)。

ようするに、クロアチア、というより、地中海周辺のヨーロッパの伝統的なクリスマスケーキになります。この時期のスーパーでは、山積みされたパネットーネが投げ売りされているのをよく見かけます。適当すぎじゃね?とも思いますが、実は必ずしもクリスマスに食べるわけでもなくて、普通にパンの代わりに毎日食べたりもします。なので扱いも結構ぞんざいです、、、。昔はもうちょっと丹精込めたケーキを各家庭で焼いてたそうですが、大量生産・大量消費が可能になった現代ならでは、ですね。

f:id:Tomoishiro:20201118035944j:plain

パネットーネその1

f:id:Tomoishiro:20201118040025j:plain

専用のおしゃれな容器も。

f:id:Tomoishiro:20201118040128j:plain

パネットーネその2

f:id:Tomoishiro:20201118040201j:plain

一個(800g)全部食べると訳3000kcal!!

一瞬買おうか悩んで、男やもめの一人暮らしでは到底食べきれないと即座に諦めました、、、。まぁ本来、クリスマスは家族で祝うものですからね。

 

ちなみにPandoroは(多分)クロアチア語、Panettoneはイタリア語。クロアチアはイタリアから見てアドリア海の対岸に位置する国で、歴史的経緯(主にはかつてのヴェネツィア共和国関連)により、場所によってはイタリア語が結構通じます。私が住んでいるZagrebは内陸なのでそうでもないのですが、綺麗な海が自慢のSplitとかだと、クロアチア語の次にイタリア語話者の方が多かったり。

宣伝・ノーベル物理学賞受賞者講演(2020年11月23日)

いきなりですが宣伝です。

2020年11月25日に、東北大学の主催で、YouTube Live上でノーベル物理学賞受賞者を招いて講演が行われます。
参加申し込み締め切り: 2020年11月23日

www.tfc.tohoku.ac.jp

講演者は以下のお二方になります。

  • 梶田隆章氏(東京大学宇宙線研究所所長・教授)
  • Rainer Weiss氏(マサチューセッツ工科大学・名誉教授 & ルイジアナ州立大学・特任教授)

f:id:Tomoishiro:20201116190605p:plain

 

今回はかなりのビッグネーム2名の講演が聴けるチャンスです。またYouTube Liveでの配信ですので、インターネット接続さえあれば、誰でも、何処からでも視聴できます。つくづく良い時代になったもんです。昔だったら「お金払ってでも聞きたいのに、会場行けない(泣)!」って人達もいただろうに。

 

(以下、思い出話。)
現在の私の拠点はクロアチア・ザグレブですが、ここに来る前はイタリアのパドヴァという都市に居ました。そのとき幸運にも、梶田先生の講演を聞く機会がありました。パドヴァ大学が先生に何かしらの賞か栄典かを授与したときの記念講演です。

Interview with Takaaki Kajita - YouTube

そのときに聞いた、「私(梶田先生)の研究は小柴昌俊先生から始まった一大事業の一部である。」という話がとても印象的でした。

自身のノーベル賞もさることながら、ニュートリノ天文学という、「ノーベル賞量産装置」ともいえる研究のプラットフォームを作り上げたのが、小柴先生の真骨頂だったのだと思います。

 

小柴昌俊先生、あらためて、ご冥福をお祈りいたします。