先週、2023年5月16日、京都大学基礎物理学研究所の教授であった大西さんが亡くなりました。享年58。
大西明氏死去(京都大教授・物理学):時事ドットコム (jiji.com)
以下、生前にご本人からもらった言葉を、思い出せる限り、書き残しておこうと思います。関西言葉の再現度がイマイチなのはご容赦下さい。
2022年5月初旬
大西「ここだけの話、キミの方は大分“たなぼた”です。」
オレ「ですよね~笑。でもまぁ、これも何かのご縁ですし、ひとつよろしくお願いします。」
大西「はい、よろしくお願いします。」
2022年10月初旬
オレ「時間発展の方法とは別に、非エルミート方式でも解いてみたい問題がありまして。」
大西「それで誰か知らないか?とね。しかし、そこまで具体的な問題意識を構築できているなら、キミ自身が二刀流になった方が早いんじゃない?」
オレ「え」
大西「やってみれば良いと思うよ。」
2022年11月中旬
(Dirac方程式による1p放出の研究発表の後で。)
大西「今日の発表の、あれはもう論文にしましたか?」
オレ「まだです。」
大西「なんで?早く書いたほうが良いですよ!」
オレ「しかし、まだ実験データが乏しいところを2点だけですし、とりあえずやってみた、以上の内容ではないので、出版まで行けるかはビミョいです。」
大西「そうかもしれないけど、原稿は書き始めた方が良い!」
オレ「押忍」
(数日後)
大西「他の人が確立した理論アプローチでもやってみて、同じ結果に収束していれば、レフェリーもそこまで文句は言ってこないはず。」
オレ「ありがとうございます。では、他の理論結果との比較もやってみて、原稿に盛り込んでみます。」
オレ「ちなみに、大西さん、共著に入ります?」
大西「ありがたいお誘いですが、ご・め・ん・こうむります。少なくとも現時点までは、そのプロジェクトは、君が一人でやってきた筈です。論文も一人で責任を持ってください。」
オレ「Yes, boss.」
2023年2月中旬
(ハイパー核からの1p放出関連で新ネタがないかと相談して。)
大西「Dirac方程式で解きたいんか?」
オレ「いえ、SchroedingerでもDiracでも、どっちも使えるので、そこはお気になさらず。」
大西「そう?なら色々できそうやね。まず、核種を変えてみるのはアリだと思う。」
オレ「じゃあ、次は炭素や酸素、スズあたりを、、、」
大西「待って。前のふたつはともかく、スズ(みたいに重いハイパー核)は実験でつくるのはまず無理だから、計算する意味は薄い。」
オレ「むぅ。ではまず酸素から?魔法数ですし?」
大西「その方がカタいでしょう。」
2023年3月初旬
(移籍することをお伝えして。)
大西「これまでありがとう。正直なところ、君がウチに来られたのは、他の分野に強い候補者がいなかったためです。まずは(予算を奮発してくれた)YX財団さんにしっかり感謝してください。今後、もう少し論文数だけでなく、被引用数も伸びるように宣伝するとか、ちょっと大物と仕事するとか、受けそうな仕事をするとかを考えてみてください。それと、滞在型・モレキュールなど、中心的な世話人として働いてくださって、感謝します。」
オレ「こちらこそ、本当にありがとうございます。お世話になりました。」